コロナ「耐性」、最も強い企業は… 小売・外食業を「ストレス耐性」で評価

新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の動きや景況悪化が、小売・外食産業の業績に影を落としている。この記事では、小売業の時価総額上位20銘柄と外食業の同10銘柄の計30銘柄を対象に(2020年3月末時点の順位に依拠)、景況悪化や消費者所得の減少が長期化した場合の「収益耐性指数」を算出して、コロナ禍に対する各社の「ストレス耐性」を探っていく。

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コロナ「耐性」、最も強い企業は…

小売・外食のストレス耐性

ストレス耐性の評価には、以下の数式を用いた。
(太字)収益耐性指数=(100%-①損益分岐点比率)÷(②所得弾力性)
の「損益分岐点比率」とは、各企業が固定費を吸収するために必要な「損益分岐点売上高」を算出し、現在の売上高で割ったものだ。固定費の抑制などで高い営業利益率を達成している勝ち組企業は、損益分岐点比率が「低く」なる傾向がある。
一方、②の「所得弾力性」とは、消費者所得が1%変動した場合に各商品への支出額が何%変動するかという「感応度」を指す。所得弾力性が1を超える品目は「選択的支出」、1以下は「基礎的支出」とも呼ばれる。前者は不要不急の贅沢品で、後者は簡単には削れない必需品だ。
 これら2指標を以下の計算式で組み合わせ、コロナウイルスなど外生ショックに対する各社の「収益耐性指数」を算出した。計算式左の括弧内(100%-損益分岐点比率)は「何%の減収で赤字になるか」を示しており、所得弾力性で割ることで「何%の所得減少で赤字になる(リスクがある)か」を大まかに試算できる。
この耐性指数の値が大きいほど、外生ショックに対するストレス耐性が高いと捉えることができる。

耐性強い医薬・必需品、弱い外食・百貨店

外食・小売のストレス耐性2

結果は、上記の表の通りだ。ストレス耐性(収益耐性指数)が高いのは、損益分岐点比率が低く、生活必需品を取り揃えるニトリHDやセブン&アイHDなど。ドラッグストア各社のストレス耐性の高さも目立つ。かたや、必ずしもストレス耐性が高いと言えないのは、損益分岐点比率、所得弾力性がともに高めとなっている外食、百貨店、アパレル等だ。
皮肉なことに、4月以降の外出自粛や集団感染防止のために店舗休業等を強いられているのは、ストレス耐性が高いコンビニやドラッグストアではなく、ストレス耐性が低い外食や百貨店である。
収益構造や商品特性で決まる「ストレス耐性」が低いということはすなわち、赤字転落リスクが高いということだ。それらの業種の店舗が休業せざるを得ないという事態は極めて深刻であり、なんらかのセーフティネットの整備が焦眉の急である。

mitsukoshiyasumi

もちろん、ストレス耐性の高い会社が普遍的に良好な会社というわけではない。“ポストコロナ”を想起してみよう。どこかの段階で、個人消費は小さいながらも自律的反転を見せるであろう。
政府による景気刺激策が奏功することも考えらえる。個人消費の回復局面においては、表中の下位企業の方が売上や利益が急回復する可能性さえある。

まとめ

ストレス耐性にかかわらず、コロナ禍を契機とした消費者行動の構造変化に正しく対応することが、景気回復の恩恵を受けるための必要条件となるだろう。例えば、コロナ禍によってフードデリバリーが一段と普及していくと、コンビニ業界の中食商品への影響が徐々に効いてくるかもしれない。かたや、外食業は短期的なストレス耐性こそ低いが、中長期的にはフードデリバリーを活用・協働していくことが可能だ。ポストコロナの消費者行動を見据えて、ストレス耐性の高い企業こそ、危機感を持ってビジネスモデルを磨き込んでいく必要がある。

出所:各社直近決算資料および総務省家計調査年報(2019年)よりフロンティア・マネジメント試算

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