コロナ収束後の中国、他国との関係は?

中国のコロナウイルス(COVID-19)感染がピークを脱しつつある。武漢と他都市の相互移動が再開されるなど、政府の防疫対策は、国内の感染阻止から、「輸入」されるコロナウイルスのブロックに軸足が移り始めている。「収束」後の中国と、依然拡大が進む他国との関係は、どう変化するだろうか。

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正常化へ進む中国

北京

筆者は中国でのコロナウイルス拡大期、
「コロナウイルス後の中国経済」(2020年2月13日)のなかで、こう予想した。

「2月10日以降も原材料、従業員の課題から、自動車等主要産業の再開は更に遅れる。本疾病の収束が遅れるほど、中国発世界経済へのマイナス影響は拡大する。中国政府は稼働減少による中小企業、地域への金融支援を打ち出し倒産防止に努めているが、各国共同による疾病対策が必要と考える」。

その後、全世界での広がりは周知の通り。アメリカ、イタリア、スペイン、ドイツでは中国の累計感染者数を超え、日本も含め収束の兆しが見えない。

更に感染地域は広がり、隔離措置を取らないブラジルでは直近1か月で約1万人に感染者が増加し、南米周辺国でも同様に拡大が収まらない。(4月1日現在)
中国での新規発症者は、香港・台湾を除けば日数20-50名で、ほとんどが海外からの帰国者や外国籍者だ。

ここに来て、中国統計発表に各国から疑義が提起され,無症状感染者が新たに公表数値に加えられた。(上記同日現在 1,024名)この感染者数推移も追っていく必要はある。

ただ、コロナ抑制については武漢から始まった中国各都市の封鎖(ロックダウン)からの措置による効果が出ている。経済面を犠牲にしてでも、ロックダウン、店舗閉鎖、人の移動制限を国民に従わせる、政府の「強制力」による成果ではある。

一党支配の中国だからできた?

電車社内

1月の武漢封鎖以降の感染防止について、「中国(一党支配)だから出来るものであり民主主義(議会政治)国家では難しい」との意見が多かった。
ところが,この2週間の民主主義国家での地域封鎖と移動制限策は、政治体制の差とは関係なく類似している。

「自粛要請」を繰り返す日本でさえ,在宅勤務などにより東京地下鉄の一部は1か月以上前の中国大都市の様に見える。

政府と生活

記事

4月4日は中国では「清明節」。春分の日から15日目で先祖の墓参りや親族が集まり会食をする習慣がある。
今年は、医療関係者をはじめとしてコロナで亡くなった方たちを、国が弔う日とした。半旗を掲げ、その日のネットニュースは白黒の表記であった。       

大都市近郊では事前に例年通りの墓参、宴会は行わない旨の政府要請があり、墓掃除の代行のみならず、墓参制限のネット予約システムを導入。墓地入園時の健康検温チェック措置と、再拡散予防の対応が続いている。同時に就業復帰が徐々に認可され始め、4月8日には武漢と他都市の相互移動が再開された。

外食、旅行、家政の3業界は大打撃

封鎖に伴い「集合」禁止による大きな影響を受けているのは外食、旅行、家政(ケアサービス等) 3業種。
人が人と接触する、また接触の場を提供する産業である。各市場規模は2019年推計で 約4.7兆元(75兆円)、6.5兆元(104兆円)、0.6兆元(1兆円)と巨額だ。※為替レートは1元=16円で計算。

中国商務部は1-2月の外食は昨年比43%減、ホテル(旅行業一部)、ケアは75%以上減と3月末に発表。同時に3月の就業者復帰率は各80%、60%、40%であるものの売上急回復には時間が掛かる見通しだ。

EC配送員はこの封鎖時期が繁忙期となり人員は数百万人から更に雇用増加の機会となったが、それ以上に人員を要する上記3産業への対応が必要である。

収束を急ぐ中国政府

STOP

筆者は現地コンタクトから全人代開催を5月のメーデー(労働節 1-5日連休)後とし、その後正常化に向かわせようとの意図を予想する。

政府は収束宣言を急いでいる。

「吹哨人」(ホイッスルブローワー、内部告発者)が広がると共に、SNSで政府への不満書き込みが削除できない状態が続き、習体制への不信から政権崩壊へ道を避けるために必要でもある。

それと今年は第13次5ヶ年計画(2016-2020年)の最終年。次の5ヶ年計画策定に向け重要な時期であり、コロナを収束させ、現状整理と新たな計画策定に向けなければならない。

「伝染病との闘い」に打ち勝った共産党政府、習主席としての権力体制が再び整い、自国製品の市場拡大、海外技術の獲得を含め海外投資活動が活発化と同時にリーマン・ショック時の4兆元(64兆円)インフラ投資の様に、中国での産業活性と外資導入積極策も考えられるかもしれない。

国内収束後も、閉じたままの市場

しかし、異なる政治体制で同様の封鎖を行う他国が正常に戻らなければ市場は閉じたままとなる。
「中国発」で、発症事例の隠匿がパンデミック原因とし、これに伴う経営悪化から中国政府を訴訟する外国企業も出てきている。
多くの国家が内向きになり、外への嫌悪感が強まる事は何も成果を産まない。中国にとって、コロナに加え、自国への反感の鎮静化が必要である。

また、今後パンデミック懸念のあるアフリカは中国の大きな投資先であり(2018年直接投資額430億米ドル、世界4位)アフリカにおける中国企業の売上は2025年4,400億米ドルに増加との推測もある。もちろん欧米諸国、日本もラストフロンティアと言われるアフリカ市場への直接・非直接投資は行われているが、中国が他国に先んじて国内での発症を抑えていく中、海外との連携、サポートが求められる。
国民の信頼回復に、生活へ安心感を与える事を優先せざるを得ない中国政府には、重い課題である。

世界的な食料輸出制限へ

小麦

そんな中、小麦とコメの輸出国で動きがあった。
3月からロシアが小麦輸出制限(4-6月700万トン以内 昨年実績720万トン)を発表後、ベトナムがコメ輸出の新規契約締結を停止。その後ウクライナの輸出制限検討、インドの輸出制限、カザフスタン、カンボジアなど各穀物輸出国が同様の動きを示している。

アメリカ、カナダ、豪州、欧州農産物輸出国は制限に否定的であり、上記制限国も長期継続とはしていない。

今後、コロナ罹患者数の減少が見えなければ、産出国の制限が継続と拡大の可能性もある。中国は、食料自給率の高さと備蓄につき連日報道を行い、国民の買い占め、物価上昇への抑制を図っている。

直近では穀物相場において2005年から2008年穀物価格が上昇を続け、途上国中心に食料不足、危機が訴えられた。原油価格の上昇により穀物貿易価格(運賃)の上昇、産地の天候異変(干ばつ)が続いた中で投機マネーの流入、原油以外のエネルギー開発としてバイオフェル(穀物原料エタノール)ニーズ、そして数十年言われている継続する人口増加による食糧不足予測が原因であった。

これにより、穀物を飼料として消費し生産される乳、乳製品、食肉価格への影響も出た。日本で消費者のバター買い急ぎから小売店から一時製品が消えたのもこの時期であった。
FAO(国連食糧農業機関)が各国と短期及び中長期取組につき宣言、リーマン・ショックによる経済不況が先物相場商品である原油、穀物価格の下落につながり現在に至っている。

食糧不足にはつながらない

筆者は、今回の輸出制限が食糧不足にはつながらないとみている。

今回の農産物輸出国の制限は、自国民に安心感を与える事を優先している。外貨獲得の減少につながる内向きの姿勢で、余剰商品を抱え込みながら、農家に生産を継続させる事は長期的に無理があると考える。

中国の場合、食糧穀物消費の輸入は約2%で、量的な自給率は高い。油糧及び飼料原料となる大豆消費量の約85%は輸入依存となり、世界全体の貿易量の約60%である。輸入先はブラジル、米国、アルゼンチンからであり、輸出制限の宣言はしていない。

4月以降アメリカで大豆の播種作業が開始され作付面積増加見込みであり、南米は収穫を終えている。産地での制限が長期の食料問題につながるとは考えにくい。

しかし、コロナで懸念されるのは農産地での発症であり、これから秋までに農作業へ与える影響が、天候要因以外で2021年以降の食料需給の変化を生む可能性がある。

中国では農産地における大規模感染は見られず、これはSARSの経験から各農村が外部からの進入を止める動きも一因と考える。封鎖期間、物流の主体となるトラックが地域間輸送において特別許可により、医薬品、食料を優先的に各地に供給できた。

まとめ

産地国でこれから集荷、選別、物流と供給地と消費地をつなぐインフラをどう整備するのか。どう規制するのか。コロナウイルスの拡散が農業地域のような人口密度が低い地域でも広がる時、これらの対応を早急に見直す必要がある。

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